洞察力、見えないものを見る

 空気が澄んだ日には和歌山県や福島県の山から富士山が見える。300キロ先の見えない物が見えた感動は大きい。学生時代に報道写真は写されていない部分が大事だと学んだ。言葉だって奥深い。人は顔で笑って、心で泣く場面が多い。人は言葉で賛成しても心では反対している時がある。

 私は工事現場が好きだ。松山市内の工事現場だけでなく、東京の工事現場を見学に行く。工事現場は目に見えない物が見えて楽しいからだ。人や車の動線、建築基準法規制、構造計算・間取り設計・建築費・材料費・販売価格・利益額まで、工事現場では消費者には見えない物が見えてくるから楽しい。

 建物で見えない部分と言えば、建物を支えている地下の部分がある。スカイツリーの基礎工事を見た人が居るだろうか。見上げて凄いと言う人は居るが、基礎工事を凄いと言う人は居ない。住宅で耐震壁を凄いと言う人も居ない。次第に厳しくなる耐震基準、目に見えない部分があることを知って欲しい。

 地盤調査結果によるが、12階建ての建物の場合、直径2mで深さ30mに届く基礎杭を6本も打ち込んでいる事を知っている人は少ない。春の異動シーズン真っただ中だ。人は玄関エントランスを見て、室内を見学して、居住を申し込む。耐震基準を聞く人は、まず居ない。人はどうしても見た目が大事なのだ。

 建物と同じように、仕事でもスポーツでも成功の奥には目に見えない努力がある。裏方の地味な協力だってある。見えていても見逃すのに、見えていないモノまで見抜くことは大変なことだ。見えていない部分を見抜くには積極的な注意力が要る。知識と洞察力が不可欠となる。表面で判断することなく、本質部分を見抜いて、正しい判断をしなければならない。