㊙ 誰も教えてくれないお金の借り方

人生で大事なこと、それは信用だと思っている。信用・信頼が人生成功の原点だと思っている。お金の無い者が何かをするには他人資本を使わねばならない。私は多額の借金で多くの仕事をさせて戴いた。経営学も会計学も学んでなかったが、借りたお金を約束通り返すことは、人付合いとして、当然だと思って生きて来た。信用は総ての仕事の原点となる。信用は口約束を守ることから始まる。口約束が守れない者とは仕事の約束はできない。約束を破る者はビジネスパートナーとして相手にされない。

  当社には銀行融資部、審査部長を6年経験したH氏が居た。マル査の強制捜査が来た時、元審査部長のH氏に「銀行は何で二宮にこんなに多額のお金を貸したのですか?」と聞く場面があった。H氏の回答は明確だった。そして嬉しかった。「銀行は資産や担保があっても貸しませんよ。キッチリお金を返して貰える人に貸すのです。」とはっきり答えた。私は借金の返済には命がけだった。返済口座のお金を私用で流用したことは一度もない。真剣に仕事に取り組んで居たら、いつの間にか、途方もない借入金額になっていたのだ。

  そうは言っても銀行はそう簡単にお金を貸してはくれない。個人でも会社でも、事業主になるには、銀行からの借り入れ成功が登竜門だと思う。銀行に相手にされない時は、借主の資質か、事業の計画か、何処かに問題がある筈だ。銀行は借主の資質と計画を徹底調査する。生活態度や仕事ぶりを調査して、正しくお金を扱うことが出来る人物かをチックする。銀行だって融資したいのだ。銀行に頼まれて言っているのではない。お金はお金を大事に扱う人にお金を使って貰いたいのだ。

  銀行の心は案外単純だ。あなたがお金を貸す立場と同じである。なぜお金が必要なのか?どんな資金で、どうやって戻してくれるのか?真剣かどうか、話の内容に合理性があるか、あなたはそれを確かめる筈だ。銀行もそれと同じである。

  借入の申込者は事業の問題点・現場の弱点から話すべきだ。実績や計画を具体的な数字で示すべきだ。マーケティングの数字も大事だ。借主の熱意(真剣度)は準備する資料を見れば分る。嘘はいけない。恥かしがらず本音で素直な心で話すべきだ。あなたの説明で事業の合理性を見ている。あなたが真剣で合理的であれば、銀行はあなたの事業を手伝ってくれることになる。

  結論として、事業は事業主の自己実現であっても、誰かのお役に立つものでなければならない。何かの役に立つことに繋がらなければならない。お金を追いかけてはいけない。仕事を追いかけるべきだと思う。お金(資本)と言う魔物は、お金を増やしてくれる人の元に自然に集まってくる。信用は信用を呼ぶ。出資しても渋沢栄一さんなら間違いがない。渋沢栄一の元に新規事業が次々と持ち込まれた大河ドラマのアノ場面と同じだと思う。