恐ろしい相続

 相続とは亡くなった人の所有していた不動産や預貯金を、相続権利者が、引き継ぐことだと思っている人がほとんどだと思います。大間違いです。相続とは怖いものなのです。このように思っている人は大きな見落としがあります。相続人は被相続人の地位をそのまま継承していることを忘れてはいけません。借入金や連帯保証債務、その他の約束事すべてを引き継ぐことになるのです。「資産は引き継ぐが債務はいらない」なんて通用しません。負債は要らないと言うのなら、預貯金も含めて、すべての財産を放棄しなければなりません。

    つい先日、こんな話が新聞に出ていました。数十億円と言う資産を持っている77歳の方が亡くなりました。彼には40-50歳代の4人の子供たちがいます。77歳の父親の借り入れ金額と連帯保証債務を調べた結果、4人のうち3人の息子はとても相続できる資産状況でないと判断して相続放棄をしました。もう一人の52歳の息子は入院中だったため相続放棄の手続きができなかったのです。父親(77歳)の死後、息子も病院で52歳の若さで亡くなったのです。亡くなった息子には更に20歳前後の子供たちがいます。

    問題は入院中の52歳の相続人が、自分の病気があって、財産放棄の手続きが出来ていなかった点です。相続放棄の手続きが出来なかったためにお爺さんの財産と負債を入院中の息子が単独で相続してしまったのです。20歳前後の孫から見れば相続財産に親(52歳)の財産にお爺さん(77歳)の負の財産が加わっていたのです。

    お爺さんの膨大な借金を知った孫たちがお爺さんの借金と連帯債務を、亡くなった父親に代わって放棄できるかが裁判になったのです。親父のプラスの財産は相続したいが、お爺さんのマイナスの財産だけを放棄することが出来るかどうかと言う裁判でした。相続人は被相続人の地位(負債や連帯保証人)もそのまま相続してしまうことを忘れてはいけません。田舎にある荒廃した山林や田畑を相続して苦しんでいる人をたくさん知っています。高齢の父親を持つ人は父親の財産を確認しておく必要があります。